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ヨーロッパ在住の会社員の雑記帳です。ジャンル問わず好きなこと書いてます。

金融資本主義を超えて -僕のハーバードMBA留学記

読書 仕事/キャリア

金融資本主義を超えて―僕のハーバードMBA留学記 (文春文庫)

金融資本主義を超えて―僕のハーバードMBA留学記 (文春文庫)


■ ルポルタージュとして読むと面白い

どこかのサイトのリンクを辿ってきて出会った一冊。先日見事上場を果たした、ライフネット生命の副社長、岩瀬大輔氏の著作です。

全然知らなかったのですが、『ハーバードMBA留学記 資本主義の士官学校にて』を書き直した文庫版なんですね。ソフトカバーの方はAmazonの書評を見ていると賛否両論でしたが、ルポルタージュとして読むと面白いと思います。HBSでの友人とのやり取りから始まり、授業の一こま、異文化経験、ファンドでのインターン、三木谷さんとの会食、アントレプレナーシップ、社会起業、株主至上主義などなど、現地で著者が体験をし、感じたことが率直な言葉で下記綴られています。元がブログということで全体の構成にまとまりはありませんが、留学を考えている人は雰囲気を感じ取るのに非常に参考になる一冊なのではないでしょうか。

■ MBAなんて意味がないという議論について

MBAといえば、特にHBSなどトップ校の卒業生が世界の各国で活躍されていることはとても有名で、投資銀行ファンドで働きたいという人や、起業を目指す熱い思いを持った人たちが集まるイメージが強いですが、それにかかる費用は一般的に2000万くらいと言われています。留学するとなれば人生においてもかなり高額な投資になるわけですが、昨今はこの費用対効果に疑問を唱えるような記事も散見します。一時期のMBAバブルとは違い頑張って修了しても就職で有利に働かないだとか、MBAで学べる知識は全て本やネットで学べることだ、といった論調です。

しかし、こういったMBA体験記を読んでいると、上記のような指摘は的を外したものであると分かります。MBAの真の意義は、知識ではなく『体験』そのものなんだなーと感じるのです。著者の経験を見ても、様々なバックグラウンドを持った色々な国の出身者と一緒にチームを組んで議論をし、優秀な教授に教えを請いながらいくつものケースを詰め込みで勉強をする…といった経験は本やネットでは絶対に得られません。良い職につけるわけではないという指摘についても、キャリアアップだけを目的に『MBA』というブランドだけ取っておこうという人に対しての反論としては有効ですが、MBAの本質は別のところにあるのかと。

もっとも、生かすも殺すも本人次第で、MBAを修了しても使えない人材はいくらでもいるということは自明ですが、自分を成長させるツールとしては最高の環境なのではないかと思います。


■ エリートとワークライフバランス

本書を読んで印象に残っているのがこのポイント。話の中で、著者の友人で死の床についている成功した経営者のカウンセリングを行っている女性が、そういった人たちは誰一人として「あぁ、自分の人生、仕事を十分にやり遂げられなかった。もっと仕事に時間を使っておけば良かった。」とは言わないという話が出てきます。そりゃあ十分に仕事をやり遂げたから成功をしているわけですが、ここで言うのはそう言う意味ではなく、多くの人が「仕事ばかりに時間を取られて、自分の時間を家族のため、自分のために十分に使えなかった」と嘆く、というお話です。

MBA(というかHBS)を『不幸な人間の製造工場』と鋭く指摘した書籍もありますが、せっかく壮大なビジョンを持って経営学を学び、それを仕事に活かせたとしても、仕事にのめり込み過ぎてワークライフバランスを見失ったしまえば、たとえ大金を手に入れたとしても人生の充足は得られないはずです。日本でもようやくワークライフバランスの考え方が注目され始めてきましたが、この点はMBA卒業生だけではなく万人が肝に銘じるべきところだと考えます。

このことは、後書きに著者が書かれている下記のフレーズにも関係していると思います。

「留学するまでの自分は、いつも通過点にいるような気がして、早く次の地点へたどり着きたいと思っていた。しかし、留学をきっかけとして、人生は旅そのものであることに気がついた。A地点からB地点へと、少しでも早くたどり着こうとすることが目的ではない。大陸を鉄道で旅するように、車窓から見えてくる美しい景色、聞こえてくる音、入ってくる匂いを味わい、ともに旅をしている同乗者との対話を楽しむ。その一分一秒が、旅そのものなのである。」

まさに本書で言いたいことはこの一節にまとめられていると感じるのですが、要は目的を達成するための生き方をしていると、上記の経営者の例のようにそれ以外のことに目を向けられず、目標を達成した後に何も形として残らないのです。

人生は本当に些細なことを含めた、毎日の営みの積み重ねです。何一つ犠牲にして良いことなんてない。そういった考えを持つ自分にとって、上記のあとがきの言葉は非常にしっくりときました。

人生という旅そのものを楽しむ。

この考え方を、自分も大切にしていきたい。


以上。


*関連図書*

ハーバードMBA留学記 資本主義の士官学校にて

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ハーバードビジネススクール 不幸な人間の製造工場

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