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ヨーロッパ在住の会社員の雑記帳です。ジャンル問わず好きなこと書いてます。

ディベート思考を身につけると色々と捗るぞ

先日久々に学生時代にやってた英語ディベートの大会を見学しに行ってきました。

自分がやってたのはParliamentary Debateという競技でして、イギリスの議会をモデルとして生まれた競技で、その場で出されたテーマに対して肯定側•否定側に分かれ、壇上で順番に7分程度のスピーチを行っていくというスタイルです。詳しいルール等はこちらのページに書いてありますが、なかなか刺激的な競技で学生時代は随分とのめり込んだものです。

ディベート思考といえば、いつも読ませて頂いているブログでこんな記事が人気になってました。

論理的思考を鍛える5つの反論のパターン/「きのこVSたけのこ」論争に終止符を!

1.No reasoning (論拠がない)
2.Not true (うそだ)
3.Irrelevant (無関係だ)
4.Not important (重要ではない)
5.Depend on *** (○○による)

という5つの反論のスタイルをキノコの山とタケノコの山という身近な例で説明してくださっている良記事ですが、実は文中にもある通り競技ディベート経験者なら誰しもが目にしたことのある基本知識。更にディベート思考について言えば、最近流行の瀧本先生が下記の新書も出しています。

武器としての決断思考 (星海社新書)

武器としての決断思考 (星海社新書)

この本では反論の仕方はもちろん、メリットとデメリットの比較であったり、そもそもの議論の組み立て方など、論理的な思考法とそれに基づく決断思考について詳細に説明がされています。しかし本書の内容も、競技ディベート経験者であれば一通り聞いたことはあることでしょう。

こういった論理的思考法についての記事や本が人気になるってことは、世の中が相変わらず論理的な思考法とはどのようなものか、どのようにして身につければ良いのか、ということに関心を持ち続けているということなんでしょうね。逆にいうと、多くの人にとってはディベート的思考法というのは少し珍しくて、実は知りたいという需要があるものなのかもしれません。

もしそういう人たちがいるのであれば、自分は声を大にして言いたい。

ディベート思考は捗るぞ』

と。

あえて上記で紹介した2つで触れられていないことを書きますが、自分がディベートをやってて良かったと思うのが、

『戦略的思考法』

が身に付くということ。競技ディベートというのは勝つための競技ですから、当然参加者は自分たちの議論が相手より勝っていると証明するために常に頭を回転させています。では、ディベートにおける『勝ち』とはどのようにして判断されるか。

その判断は「Adjudicator」と呼ばれる審判(ジャッジ)が行い、肯定側•否定側の意見を客観的に聞いて議論の優劣を判断するのですが、その判断基準というのは『クラッシュ•ポイント』と呼ばれる議論の中でも特に紛糾して意見が分かれるポイントにあります。例えば、TPPについてディベートするのであれば、自由貿易の恩恵をとるのか、自国の農業の保護をとるのか、といった議論の核ともいえるポイントです。

もうちょっと身近な例で考えると、例えば「新婚旅行に海外へ行くか、国内へ行くか」という内容を議論していたとしましょう。それぞれにおける主張としては下記のようなものがあります。

<海外>
•働いていると長期休暇を取る機会が少ないので、普段は足を運べない海外に行くべき!
•一生に一度の経験だから、普段とは異質な空間で特別の思い出を作るべき!
•円高なのでこの機会を活用すべき!(11年2月時点)

<国内>
•経費が少なくて済み、同じ予算で超高級ホテルに泊まれる!
•言葉も通じるので、旅先でのトラブルが少なくて済む!
•比較的直近でも予約がとりやすい!

ここでの議論におけるクラッシュポイントは、色々な考え方があると思いますが、自分がピックアップするとすれば「ハネムーンに何を求めるべきか?」という点ですね。「特別な思い出」を求めるのであれば海外ですし、「コスパが良くて安全快適な旅」を求めるのであれば国内です。ディベーターは、ハネムーンと普通の旅行との違い等を分析•比較しながら、どちらがハネムーンにふさわしいシチュエーションなのかを証明してみせなければいけません。そのためには、予め来るであろう反論を予想し、自分たちの勝ちパターンを頭に描いておく必要があります。

例えば、海外派の人であれば、

「確かに結婚式後でお金は少ないし、トラブルで新婚早々喧嘩する可能性もある。しかし、お金は後で頑張って働けば貯めれるけれども、新婚旅行は一生に一度。普通の旅行とは位置づけも違う、二度とない希少な機会。それであれば、多少無理しても海外の異質な空気の中で一生忘れない思い出をつくるべき。喧嘩したとしても逆にそれが良い思い出になるし、トラブルを自分たちで解決することで更に中も深まるかもしれない。」

って感じでしょうか。お金と機会を希少性という観点から天秤にかけてみました。若干プアな主張な気がしますが。(妙案募集)


これは身近な例ですが、もちろん仕事にも同様の考え方を適用することが出来ます。要は、

1. 俯瞰的にテーマを見つめ、議論の中で核となるポイントを予め予想する
2. そのポイントに対するこちらの主張と、想定される反論、そして反論に対する反論を考える
3. 最終的にどの要素をタイブレーカーとして担ぎ出し、いかにして自分の主張を正しいと証明するか戦略を練る

というプロセスを回すのです。これがまさに『戦略的思考法』です。どのようにして自分の議論の方が正しいと思わせるかを予め構想しておく。そして、最大限に相手の議論を取り込みつつ、仮に相手の主張が正しかったとしても、自分の意見を採用すべき理由をうまく魅せる。ここでいう「反論」を「リスク」に置き換えて考えると、ビジネスをしていく上でも応用できるかもしれません。こういった思考法はディベートをやってると自然と考えられるようになってくるものであり、使いこなせれば瀧本先生がいうように、まさに『武器』となることでしょう。

とはいえ、実際仕事で活用するのはなかなか難しいです。自分の業務をなかなか客観的に見れないこともあれば、上司からの反論で自分の戦略が全て吹っ飛んでしまうこともありますし、仮に論理的にこちらの言い分が正しかったとしても自分には抗いようもない政治的な力に押しつぶされてしまうこともあるでしょう。また、知っていることと使いこなすことは全く別で、いざ実践の場に立つとどうも頭が固まってしまうことも多々あります。(←自分のことです)

それでも、ディベート思考を身につけることは人生の色々な場面で役に立つことでしょう。さっきの旅行の例もそうですが、日常には判断すべきことや相手を説得しなければいけないことがたくさんあり、それを出来るかどうかは偏に自分の頭でどれだけ考えられるかにかかっているのです。流れに任せる議論をするのはもうやめて、戦略的な思考を日常に導入してみてはいかがでしょうか。


以上。