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ヨーロッパ在住の会社員の雑記帳です。ジャンル問わず好きなこと書いてます。

日本人の9割に本当に英語は不要なのか?

昔から良くある話なのですが、次の記事を読んでふと思うところがありまして。

 

「日本は英語化している」は本当か?――日本人の1割も英語を必要としていない / 寺沢拓敬 / 言語社会学 | SYNODOS -シノドス-

 

このレポート内では、統計データをもとに実際に日本人で英語が必要な人は全体の何%くらい存在するのかを分析して、その割合を1割以下と結論づけ、更に教育者や経営者に対して『地に足の着いた政策を』と提言しています。

 

仕事で英語を「よく使う」と回答した人は回答者全体のわずか1.0%、「時々使う」と回答した人は5.1%で、合計しても6.1%と1割に満たない。就労者サンプルを分母に同様の計算をしても、やはり1割は下回る。常識的に考えても、「時々使う」と回答した人すべてを、高度な英語を使う人に含めるのはかなり無理があるだろう。したがって、安河内氏ばかりか、水野氏ですらしぶしぶ認めていた「高度な英語を使う人は1割」という認識でさえも、少々多めに見積もり過ぎであると言えそうである。

(中略)

もちろん、今後ますます英語教育が重要になっていくのは間違いない。学校英語教育やビジネの英語化も、いままで以上に発展が求められるだろう。しかしながら、現代の英語使用ニーズの低さは、無視してもよいほどには「改善」していないこともまた事実である。「みんなに英語が必要」などという空想的な社会像をいたずらに描くのではなく、日本社会の実態をきちんと見据えて、地に足の着いた教育政策・英語教育論・経営戦略を練っていかなければならない。そのヒントのためにも、たとえば政策立案者や教育研究者、経営者は、社会統計と歴史をきちんと直視しなければならない。

 

確かに現状をもとに分析すると割合は低くなり、英語ってみんなが思ってるほどニーズはないということは可能かもしれませんが、果たしてこのストーリーは妥当と言えるのでしょうか。自分はそうは思いません。

 

そもそも日本社会は英語が必要ないように出来上がっている

まず、今の状況を調査してどれくらいの人が英語を必要としているかを結論づけるのは英語必要不要論の論点から少し外れます。なぜなら、『英語が必要』と主張している人たちの多くは、『今すぐに必要』というよりは、『今までよりもいっそうニーズが高まってきている』という考えを持っている人が多いから。この点については、引用したレポート内で2006年から2010年で英語を使用している人は増えるどころか減っているという分析により否定されていますが、2010年から2014年の変化が見えないのと、仮に増えていないとしても、それは単に日本社会がグローバル化に対応できていない(=英語を使わずになんとかしのごうとしている)ということを立証する1つの根拠になりうるかもしれません。

※レポート中では減少の原因について景気の影響を引き合いに出していますが、個人的にいまひとつしっくりとはきませんでした。

日本という社会は内需が依然大きいため、グローバルな規模で取引を行い大きな利益を上げている会社は、全体の数と比較するとそんなに大きくないと思います。(調べたわけではないので想像です。)旅行にしたって未だ添乗員付きのツアーで行く人もそれなりにいますし、外国人訪問者も増えているとは言っても西欧の比ではありません。なので、日本国内にいると、諸外国の人たちと比べて英語を使う機会は圧倒的に少ない。そんな社会で生きてるので、もしかしたら英語が必要なのは1割に満たないかもしれない。これは事実であり、否定は出来ないことかと思います。

 

英語は何のために必要なのか

が、今の社会を生きる上で英語が不要というのは、英語の勉強が不要であるということを証明するものでは決してありません。なぜなら、日本人にとって英語というものは、可能性を広げるために学ぶものであるからです。

遅かれ早かれ、内需が枯渇してどの企業も世界全体を市場として捉えなければいけない時代が必ずやってくると思います。もしかしたらもう既にそのときがやってきているのに、みんな無視しているだけかもしれない。自分がいつも疑問に思うのが、『起業しました』という身の回りの人たちが、ほとんどのケースで市場を『日本国内』に限定してビジネスを開始していること。ビジネスを開始するのがまずは自国というのは他の国でも同じかも知れませんが、世界展開を考えている経営者の数を比較すると、日本以外の国の方が多いのでは?と勝手に思ってます。英語が出来ないと、自社サービスの拡販にも足かせをはめることになってしまいます。

もっと個人レベルのことに言及すると、例えばビジネスの理論などは海外の方が先行しているケースが多いのにそれをタイムリーに学べない、日本ではなかなか情報の得にくい国際ニュースを海外誌はかなり細かいレベルで報じているのに、それを読めないなどの課題もあります。これをビジネスチャンスと見て、『海外の情報をいち早く届ける』をコンセプトにニュースを配信しているウェブ媒体もたまに見かけますが、すごく限定的な情報を日本人好みに改変して報じていたりしがちなんですよね。原文にあたる方が自分のためになることは間違いないと思います。プライベートにおいても、海外の友達をつくったり、旅行代理店を通さず自分で全部アレンジした個人旅行を楽しむためには英語が必須です。

このように、英語が出来るといろんな可能性が広がるというのは事実としてあって、自分は英語を学ぶべき意味はここにあるという風に考えています。

現状を例えると、『池に魚がいっぱいいるのに釣り竿をもっていないから魚が釣れない(でもスーパーに行けば魚は置いてある)』という状況に日本は面しているのではないでしょうか。

 

とはいえ英語が出来れば言い訳ではない

だからみんな英語を学ぼう!と言いたいところですが、自分は別にそこまで思っている訳ではありません。英語というのはあくまでコミュニケーションツールであって、大事なのはコミュニケーションを行う自分自身の知識や人間性を深めることだと思うから。

ただ、海外で駐在員として働いていると、日本人は英語が出来ないことでなんて損をしているんだ!と感じる場面が多々あります。仕事でも自分の相手先の部署は英語が堪能出ない人がほとんどで、仕事をするのにかなり苦労されている印象があります。電話した話せばすぐに解決する話を英語メールで何度もやり取りしたり、英語が出来ないことで会議が長引いたり、英語が出来ない人の穴を埋めるために人を増やしたり…これらって本当に非効率ですよね。

英語が出来ないことによる問題点をしっかりと分析しないまま流行にのっかって英語教育を広げていこうとするのには自分も違和感を覚えますが、それでもやはり英語教育の改善というのは日本に求められることだと思います。少なくとも、読み書き中心の英語教育だけでもなんとかならないものか…。

以上、雑感でした。

 

日本人の9割に英語はいらない

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