世界は楽しみに満ちている。

ヨーロッパ在住の会社員の雑記帳です。ジャンル問わず好きなこと書いてます。

外国の「誉める文化」は日本にも積極的に導入すべきだと思う

本日のお昼前の出来事。

Directorが皆をコーヒーコーナーに招集して緊急ミーティング。一体何事だと思ったら、机の上におもむろに置かれたケーキとマフィン。何だったかというと、社内で長期間行って来たプロジェクトがようやく終了し、新しいシステムの稼働が開始されたので、そのお祝いという趣旨の集まりでした。

プロジェクトに関わったチームメンバーは1人1人名前を呼ばれ、何と全員にワインを贈呈。そしてDirectorが良くやったという賞賛のスピーチを行い、後はみんなでケーキを頂くという小さな会合。実はこういったイベントは今回だけではなく、例えば部の目標を達成したりした時にも頻繁に行っています。

印象的だったのが、Directorのスピーチの中でひたすらComplimentを述べ、皆の努力に敬意と感謝を示していたこと。端から見てるとどんだけ時間をかけているのだという印象が拭えないプロジェクトでしたが、そんなことは一切触れず、とにかく「よくやった」の一点張りなのです。

思い返すと、日本にいた時はミーティング等で上司が部下やチームメンバーを褒めるという光景を見たことがほとんどないような気がします。部やもっと大きい組織のミーティングでも、業績が厳しいとかみんなもっと頑張れとかいう話はしますが、ポジティブな話ってそういえば滅多に出て来なかったなーと。上司によってはプレゼンの中で担当者の努力をねぎらうような内容も織り交ぜてくれてましたが、基本的には問題点を皆に認識させることで頑張る気にさせる、というのが日本流のやり方なのかなーと感じてます。

翻ってヨーロッパはどうかというと、今回に限らずとにかく人を褒めることが多く、自分たちの業績報告もとにかく美点凝視です。例えば、部内でDirectorがメンバーに業績をシェアする時は上手く行ったところにフォーカスして「自分たちはこんなに頑張れている」というのを示すことでみんなのモチベーションを維持しようとします。そして、在庫が切れて販売に影響が出そうな時にがんばって何とか供給を維持したりと、何かしら努力を行ってそれが報われた時は、必ず「Good Job !」という言葉が投げかけられ、Directorよりもっと上の役員レベルから降りてくることもあります。日本にいた時はここまで褒め言葉というのを聴いたことがなかったので、こっちに来てからはそういう言葉を聞くたびに何かいいなーと感じています。

思うに、日本語そのものが人を褒める時に使う言葉が少ない、というか日常生活にあまり浸透していないような気がします。「よくやった!」とかドラマとか漫画の世界ではたまに出てきますが、実際会社の中ではあまり使わないですよね。英語の「Good Job!」とはとても対照的です。どっちかというと「お疲れさま」というのが労いの言葉という位置づけですが、「Good Job !」とは大分ニュアンスが違ってしまいます。

多分日本における「褒める行為」というのは結構根が深い問題で、会社に限らず教育や育児においても、欧米と比べてあまり一般的でないのではないでしょうか。自分たちの学生時代を思い返しても、褒められた記憶より叱られたり怒られたりした記憶の方が強く残っているはずです。褒めることが苦手な日本人の理由としては序列をつけるのを好ましくないとする行き過ぎた平等性であったり、儒教的思想から来ているという考え方等諸説ありますが、叱られるのと褒められるのがどちらが人をモチベートするかと言われれば、当然「褒める」という行為だと思います。社会的にミスなく決められたことを確実にこなすことが何よりも重要であった(と思われる)高度経済成長期はミスを咎めることで100%正確な人材を育てていくのが大事だったかもしれませんが、クリエイティブさや個性が重要である今の時代を考えると、自分は正しいことをしているという自己肯定感を持って物事に取り組ませる意味でも、「褒める」という欧米スタイルはとても重要になるのではないかと感じます。そんなことは置いておいても、純粋に「褒める」というのはお互いにいい気分になって、いいものですよね。

褒めることが苦手な人も多い日本人ですが、こういう外国の良い文化はどんどん受け入れて、グローバル基準に近づけるといいのにな、と感じる次第です。